ストックホルムの市庁舎なんか観光して楽しいの?と以前は思っていました。日本の市役所を思い浮かべていたからだと思います。でも、有名な観光地だし行ってみようかなとふと思い、市庁舎を初めて観光した時は驚きました。
議事堂や庭の素晴らしさはもちろんのこと、黄金の間の豪華絢爛さに思わず「わあっ!」と声を上げたほどです。そして、なんといっても素晴らしいのは、塔の上から一望するストックホルム市内の眺めです。
それ以来、折に触れて何度も市庁舎を訪れています。モヤモヤした時に、市庁舎の塔の階段を一歩一歩登り、塔の上からストックホルムを見渡す素晴らしい景色を見ては元気をもらっています。
そして、人気の観光地にはちゃんと意味があるし、人々を魅了する魅力がたくさんある!と思うのです。
今回は、ノーベル賞ディナーで有名なブルーホール(青の間)、黄金の間、評議会室、ガイドツアー、チケットの予約等、ストックホルムを訪れたらぜひ足を運んで欲しい市庁舎の魅力をたっぷりとお届けします。
中庭に面したエントランス
木漏れ日が優しい中庭
ガイドツアーが始まる前に
ストックホルム市庁舎の見学は、ガイドツアーに参加することが必須です(ガイドツアーの詳細は後述)。言語はスウェーデン語または英語から選べます。私は今回英語ガイドを選択しました。
A4サイズ以上のバッグは持ち込めないので、エントランスで荷物を預けてから(無料)、入り口に集合します。
バッグを預けたり、ガイドツアー参加の証のシールをもらったりする時間が必要なので、集合時間の10-15分前には着くようにしましょう。
以下、ガイドさんの説明を元に市庁舎を紹介していきます。
青の間 : The Blue Hall
初めに入ったのは、青の間(The Blue Hall)です。毎年12月10日に、ノーベル賞記念晩餐会が開催されることで有名なホールです。
ノーベル賞晩餐会はテレビで中継されるので、「ここがあの青の間!」と、感激しました。それと同時に、「結構狭いなぁ。」という印象も受けました。
ところで、ノーベル賞記念晩餐会の招待客は約1,300人なので、このスペースにぎゅうぎゅう詰めで座ることになるわけです。そのため、招待客1人分のスペースは60cm(王族は70cm)しかないそうで、当日はどれだけ密集して座っているのか、がわかりますね。
市庁舎の説明
市庁舎は1923年に竣工し、昨年100周年を迎えました。政治部門とイベント等を行うレセプション部門の2つの役割に分かれています。12月10日のノーベル賞記念晩餐会が有名ですが、市庁舎なのでもちろんオフィス部門があり、オフィスでは約300人の職員が働いています。
また、年間200-300件のイベントも開催されています。この、青の間と黄金の間は、レンタルすることも出来ますが、子供のお誕生日会等のプライベートなイベントにはレンタル出来ません。企業や団体などのイベントのレンタルは可能です、とのこと。
ノーベル賞のかんたんな説明
ノーベル賞は、アルフレッド・ノーベルの遺言に従って1901年から始まった世界的な賞で、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和、経済学の分野で功績を残した人に与えられます(経済学だけは遺言にはなく1968年に追加)。
ノーベルはダイナマイトを開発したことで有名ですが、実は350もの特許を取っています。
そして、ノーベル賞授賞式は市庁舎の青の間ではなく、Hötorgetにあるストックホルム・コンサートホール(Konserthuset Stockholm)で行われています。ちなみに平和賞の授賞式だけは、ノルウェーのオスロで行われます。
市庁舎の設計者ラグナル・エストベリ
市庁舎の設計者は、スウェーデンの建築家ラグナル・エストベリ(Ragnar Östberg)で、市庁舎は彼の代表作です。
エストベリは、世界中を回って見てきた様々なデザインを、市庁舎にも取り入れたそうで、イタリアのルネッサンスにも影響を受けました。
ブルーホールなのに青くない理由
ブルーホールという名前に反して実際には青くない、このホール名の由来の説明もありました。
当初は、市庁舎の目の前のメーラレン湖の青色をイメージして、壁を青くする予定だったそうです。ところが、完成した青の間は、レンガの赤がとても素敵で青色にするのをやめたとのことです。
確かにレンガ色のホールはとても素敵で塗り直すのは惜しいですね。
そして、市庁舎の建設には約800万個のレンガが使用されました。また、床の石やレンガなどの素材は、全てスウェーデン産のものを使用し、レンガはストックホルム南部の工場で作られました。
この後は、青の間の階段を上って、上の階へ行きます。
評議会室 : The Council Chamber
評議会室(The Council Chamber)は、市議会が開かれる場所です。シャンデリアの向こうに段々に連なっている席は傍聴席で、主にジャーナリストが座ることが多いとのこと。傍聴席は議場の両サイドにあります。
スウェーデンでは4年に一度選挙があります。Nationell(日本の国会にあたる)、Regional(日本の都道府県にあたる)、Lokal(日本の市町村にあたる)と3つのパートです。Regionalは、例えば公共交通を決め、Lokalは、チャイルドケアや学校のこと等を決めます。
ガイドさんによると、議員全員に席があり、以前は100席だったのだけど、同数にならない様に、101席にしたそうです。そして、議員のうち13人がフルタイムワークです。じゃあフルタイムでない人は普段何をしているのか?ダブルワークなのか?ということを質問すればよかったと、今さら思いました。
天井はナショナル・ロマンティシズム建築で作られていて、青の部分は夜空や星を表しています。
ナショナル・ロマンティシズムとは、国や民族の独自の文化や歴史を大切にし、それを芸術や文学で表現しようとすることです。
ちなみに、天井の絵の中にダーラナホースがいますよ!とのことでしたが、残念ながら見つけられませんでした。次回、探してみたいと思います。
王子のギャラリー : The Gallery of the Prince
王子のギャラリーのシャンデリアは、銀メッキのブロンズとバカラ クリスタルで作られています。また、天井にはマーメイドが描かれています。
ここは、レセプションに使用され結婚式も行われます。もし、ここで結婚式をしたいのなら早めに、出来れば6ヶ月前には申し込んでくださいね、とのことでした。土曜日は約70組のカップルの結婚式が執り行われ、費用は1,000クローナです。
ストックホルム市民でなくとも申し込みはできますが、当日はスウェーデンの身分証(スウェーデン人以外ならパスポート)の提出が必要だそうです。
結婚式の詳しいことはこちらから。
王子のギャラリーの北側の壁には、Eugen王子(1865-1947)が描いた絵画があります。1917 年から 1923 年にかけて、王子は、ストックホルムの景色、主にホールの南側の窓を通して見える景色を描きました。それらは、リッダーホルメン島、カタリナ教会、マリアべリエット(セーデルマルム島)あたりをモチーフにしています。
黄金の間 : The Golden Hall
市庁舎の真打登場!といった趣の黄金の間です。ノーベル晩餐会後のダンス会場として知られています。私は、この黄金の間に入った瞬間に「わぁ!」と歓声をあげてしまいました。ガイドツアーの一緒の方もみなさん「Wow!」という反応でした。
参考までに写真を載せていますが、本当はこの写真は載せたくありませんでした。実物の方が、この写真の数千倍素敵でキラキラしているからです。
そして、北欧インテリアというか、スウェーデンのインテリアはシックで控えめ、落ち着いたデザインが多いので、どうして突然こんなキラキラの部屋を作ったのだろう?という疑問が湧きました。
黄金の間の正面に描かれているのは、実在の人物ではなく架空の女性 メーラレンの女王(Mälardrottningen)です。メーラレンの女王は、左手に王冠を持ち、膝の上あたりにストックホルム市庁舎を乗せています。女王に向かって右側(女王の左)が東側の世界で、左側(女王の右)が西側の世界です。
東側世界には、飾りをつけた象、竜宮城の様な建物、松の様な木が見えました。西側世界には、パリのエッフェル塔、馬や大きな船が見えます。
ガイドさんが、ニューヨークの自由の女神もいます!と仰っていたので、血眼で探しました。その場では見えませんでしたが、帰宅して写真を拡大して探したら見つかったので良かったです。
人生の7つの段階
上の写真上部に描かれた絵は、人生の7つの段階を示しています。右から、誕生、子供時代、青年期、成人期、老年期、最終的に魂が天国へかえります。
そういえば、日光の東照宮にも、猿の一生を表すモチーフがありましたが、あれを思い出しました。古今東西、人は「人生」や「一生」について考えてしまうのかもしれません。
黄金の間の金は本物?
金、金、金の部屋。キラキラしていてその場にいるだけでワクワクします。そして、この金の小さいタイルが全部本物ということに驚きました。2つのガラスの間に金箔を入れて挟んでタイルを作り、その小さなタイルを約1800万個使ってこの部屋が作られています。
ゴールドのタイルを使って描かれた壁の絵は、スウェーデンの歴史へのオマージュです。
ガイドさんに促されて、名残惜しい気持ちで黄金の間を後にしました。階下に降り、ガイドさんにお礼を言ってガイドツアーは終了です。でもまた来ます!
エンゲルブレクトの記念碑
市立公園へ出てきました。上の写真の左手に見えるのは、エンゲルブレクト(Engelbrekt Engelbrektsson)の記念碑です。記念碑は、高さ約 20 メートルの柱の上に立っています。
エンゲルブレクトは、15世紀のスウェーデン反乱指導者として知られている人物です。そして、彼は1436年に暗殺されてしまいましたが、その後もスウェーデンの歴史において重要な人物として記憶されています。
オフィスエリアの大木
Birger家の礼拝堂 : Birger jarls kenotaf
市庁舎の塔に登る
市庁舎のガイドツアーが終わったら、今度は市庁舎の塔に登ります。チケットの情報は記事の最後の方に出てきますので、後ほどご覧ください。
市庁舎の塔の高さは 106 メートルあります。塔の上からは、ストックホルムの素晴らしい景色を、360℃グルッと見られますので、それを楽しみに頑張って登りましょう。
塔の入り口は中庭の一角、塔の真下あたりです。集合時間の5-10分前には着くようにしましょう。
係の方の呼びかけによると、「時間が限られているので、エレベーターはそれを必要とされている方のために譲ってください」、とのことだったので、歩ける人はがんばって階段を上がりましょう。
尚、エレベーターは塔の途中まで上がるのですが、最後の階段は自力で登らないといけないので、車椅子やベビーカーで塔の上まで行くのは難しいと思います。
ところで、塔に入場できる時間は、登り10分、下り10分、頂上で見学15分の合計35分です。時間制限があり入れ替え制なので頑張って登りましょう。
市庁舎のカフェの入り口
ガイドツアーと塔のチケットの購入
ストックホルム市庁舎の見学
所要時間45分
市庁舎の見学はガイドツアーのみで、英語またはスウェーデン語から選べます。
また、1週間前からオンラインでチケットを購入できます。当日、市庁舎でチケットを購入することもできますが、売り切れの場合もありますので事前購入をおすすめします。
ガイドツアーで見られるのは、青の間、評議会場、王子のギャラリー、黄金の間です。
王子のギャラリーは、結婚式のため土曜日は見学できないのでご注意ください。
英語のガイドツアーの購入
スウェーデン語のガイドツアーの購入
市庁舎の塔のチケット
所要時間35分
登り10分、下り10分、塔の上で見学15分の入替制
市庁舎のガイドツアーと塔のチケットは別売りです。1週間前からオンラインで購入できます。
塔のチケットの購入(英語)
ストックホルム市庁舎のインフォメーション
名称 : Stockholms stadshus
住所 : Hantverkargatan 1, 111 52 Stockholm
地図 : Googleマップで見る
市庁舎内にある地下のレストランも紹介していますので、併せてご覧ください
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