ストックホルムの王道観光を楽しんだら、次は「まだあまり知られていないお城」に会いに行きましょう。
おすすめは、日本語での情報がほとんどない、ストックホルム郊外のティーレソー城(Tyresö Slott)。
外観は地味ですが、中は意外と本格的なお城らしい装飾が施されています。
しかも、ストックホルムのグルマーシュプラン(Gullmarsplan)駅からバスで30分と、拍子抜けするくらい行きやすい距離にあります。
お城好きなら一度は訪れてほしい、穴場のお城です。
Tyresö城って?
Tyresö城は、1630年代にガブリエル・オクセンスティルナ(Gabriel Oxenstierna)によって建てられました。
ティーレソー城の近くのティーレソー教会(Tyresö Kyrka)もガブリエルが建て、1641年に自ら埋葬されています。
1630年代の日本では、鎖国令が出て、長崎に出島が建設されていた頃ですね!
その頃からここにTyresö城があったんだなあ、と不思議な気持ちに。
城の目の前には、バルト海につながる海の一部、カルヴフィエルデン(Kalvfjärden)が広がっています。

ガイドツアーに参加するとTyresö城の中に入れます。
ガイドツアーは夏だけの限定公開ですが、庭園は一年中ウェルカムで、季節毎の景色を楽しめますよ。
17世紀に建てられた城と教会は、歴代のオーナーたちに受け継がれた後、北欧民族博物館に寄贈されました。

城の最後の所有者クラース・ラーゲルグレン(Claes Lagergren)は、1930年に亡くなり、お城と収蔵品、敷地は北欧民族博物館(Nordiska museet)に遺贈されました。
その後、1932年から夏季限定で一般公開が始まっています。
Tyresö城の最寄りのバス停「Tyresö kyrka」からお城までは、徒歩10分くらい。
看板を見ながら進みましょう。

レンガ造りの教会を左手に見ながら進むと、あっという間にTyresö城に到着します。










Tyresö城のガイドツアー
城の中を見られるガイドツアーですが、開催は夏の間のみです。
ツアーの概要と所要時間
ガイドツアーは6月から9月上旬の土日に開催(2025年の最終日は9月7日)
大人:170クローナ
学生と年金受給者:150クローナ
言語はスウェーデン語のみ
ガイドツアーの詳細と予約
※時間に遅れると入場できないので、10分前には着くようにしましょう
ガイドツアーの集合場所ですが、お城の正面玄関の階段を上がったところです。
開始前にドアが開くので中に入って待ちましょう。

城内はガイドツアーで回るので、大きな荷物は無料ロッカーに入れるように言われます。
それでも貴重品やスマホだけは持っていたかったので、エコバッグが大活躍でした。
一階
ガイドツアーは、まず1階、それから2階を見学させてくれます。
朝食ルーム
朝食ルームは小さな部屋に小さなテーブルが置かれています。
朝食ルームなのに、壁一面の本棚に本がぎっしりと並んでいたのが意外でした。

小さなオフィス
小さなオフィスでは、1905年頃に撮影された使用人たちの写真を見せてもらいました(狭い部屋で他の参加者が写ってしまうので写真がありません)。
女性の使用人は、黒いワンピースに白いレースの飾りがついた制服を身につけていて、ちょっと可愛いなと思いました。

この部屋には、国内外へかける電話も設置されていました。
部屋の奥に行くと、お皿などの収納棚やキッチンがあるそうです。
奥の部屋は見せてもらえないのですが、できれば見たかったなー。
素通りされたなぞの部屋
ガイドさんはすべての部屋を説明してくれるわけではなく、二つの部屋をスルーして次の部屋へ。

図書室
図書室は、当たり前ですが本で埋め尽くされていました。だいたい1万冊はあるそうです。
先に出てきた、クラース・ラーゲルグレン(城の最後の所有者)の書斎としても使われていました。
ガイドさんは、図書室に掲げられている肖像画を見ながら、それぞれの生涯を説明してくれました。

中でも気になったのは、マリア・ソフィア・ガルディさん
マリア・ソフィア・ガルディ(Maria Sofia Gardie)は、16歳のときにグスタフ・オクセンスティルナ(Gustaf Oxenstierna)と結婚しましたが、21歳で未亡人になりました。
昔のスウェーデンの貴族女性は、結婚しても苗字を変えなかったので、夫のグスタフとは苗字が違ったそうです。
でも、「え、今のスウェーデンも夫婦別姓じゃなかったっけ?」と思ってしまいました。
そして、若くしてTyresöの広大な敷地を相続した後は、実業家として活躍して、スウェーデン初の成功した女性実業家と呼ばれたそうです。
マリアさんは、今でいうバリキャリって存在でしょうか。

余談ですが、未亡人になったマリアさんのことを、ガイドさんが何度か「エンカ」と呼んでいたので、つい日本の「演歌」を思い描いてしまいました。
スウェーデン語で未亡人をEnka(エンカまたはエンキャ)と言いますが、ガイドさんの発音が「エンカ」寄りだったので。
次に面白かったのは、天井のCLマーク
1892年にクラース・ラガーグレン(Claes Lagergren)とキャロライン・ラガーグレン(Caroline Russell)夫妻が城を購入します。
クラースはローマ出身で、キャロラインはニューヨーク出身。そのイニシャルのCとLが天井に描かれていると聞いて、思わず天井を見上げてしまいました。
ちょっと写真でご覧ください。


こういう小ネタを教えてもらえるから、ガイドツアーって大好きです!
改装を重ねてきたお城ですが、図書室の木の扉だけは17世紀のオリジナルが残っているそうです。

ガイドさん曰く、最後の所有者 クラースは、フランスやフランスの王妃マリー・アントワネットが大好きで、肖像画やグッズを集めていたそうです。
今でいう「推し活」ですかね。この話を聞いて、突然 クラースさんに親しみを持ちました!
図書室には、マリー・アントワネットが処刑前に幽閉されていた時の肖像画と白いお花が飾られていました。

大食堂
夕食は大食堂でとられていました。来客があるときも同じ場所で食事を楽しんでいたそうです。
飲み物に使われたミルクは、城の外にあった牧場で飼育されていた牛から搾られていたとのこと。

素通りしたサロン3部屋
大食堂の次に3つくらい可愛いお部屋が続いていましたが、ここも足早に素通りでした。残念!


タワーサロン
ロココ調の家具が置かれたタワーサロンには、中国から届いた装飾品や陶器、壁紙がびっしり並んでいました。
1700年代のものがたくさん残っているそうです。

タワーサロンは、FIKA(飲み物やお菓子を食べながらのお喋り)を楽しむお部屋としても使われていたそうです。
朝食、夕食、FIKAと、その都度で部屋を変えているのが上流階級っぽいですね。
ブルーサロン
次はブルーサロンです。
ガイドさんが、「ブルーにしてはちょっと薄いけど、でもブルーサロンなんですよー」と仰っていたのが可愛かったです。

この部屋でガイドさんが「はいっ!またマリー・アントワネットが出てきましたよ!」と、嬉しそう。
見上げると、壁にマリー・アントワネットとその子供達の肖像画が掛けられていました。でもこの肖像画はコピーで、オリジナルはパリにあるそうです。
びっくりしたのが、その横にハンス・アクセル・フォン・フェルセン(Hans Axel von Fersen)の肖像画が並んで掛けられていたことです。

王妃マリー・アントワネットは、クラースの推しだったはずですが、推しの愛人の肖像画まで部屋に飾るのが意外というか、王妃への深い愛を見た気がします。

ところで、私がずーっと「フェルゼン」だと思っていたのが、スウェーデン語だと「フェッシェン」だと気づいてビックリ。ガイドさんが最初「フェッシェン」と仰っていて、一瞬「誰?」と思いました。
でも、ベルサイユのばらでは「フェルゼン」ですよね?
それからガイドさんが、フランス革命で怒り心頭の民衆から逃れるため、フェルゼンがフランス国王一家をパリから脱出させようと尽力した話をしてくれました。
でも、私はこの話は、「ベルばら」で何度も読んでいるので、心の中で「知ってるー」とうなづきながら聞いていました。
踊るランプ
窓辺にあるオイルランプですが、火をつけるとシェードが回って、壁に模様が映し出されるそうです。
そもそも、このタイプのランプは初めて見たし、綺麗な模様をぜひ見てみたいなと思いました。


イエローサロン
イエローサロンは、ガイドさんが「とても居心地の良いサロンです!」と嬉しそうだったので、この部屋が1番のお気に入りなのかな?と思いました。
たしかに、薄イエローでまとまったお部屋は温かみがあって、家具もスッキリ。ほっとする雰囲気でした。

イエローサロンにはヨハン3世の肖像画があります。すごく貴重なものらしいです。


二階
2階には、寝室、浴室、そして小さなカトリック礼拝堂があります。

参加者から、「ここってお化けとか出るんですか?」と質問されたガイドさんが、「そうですねー、お城はけっこう出るって聞きますよね、、、。」と曖昧な答えでした。
しかし、いつ出てもおかしくない雰囲気ではあります。


寝室
次は寝室です。
ちょっと聞き逃してしまいましたが、どなたかの寝室です。本がたくさん並んでいました。
人の寝室って、その人の日常が垣間見えるみたいでテンション上がります。

あれ?でも壁の肖像画はマリー・アントワネット?ってことは、ここはクラースの部屋かもしれません。
それにしても、こんなに熱心にマリー・アントワネットの推し活している夫を、妻のキャロラインはどう思っていたのか?
気になります。

寝室の横のドアを開けるとバスルームがありました。
トイレの上のタンクに水がたまるタイプだそうです。タンクの紐を引っ張ると水が流れるそう。
年配の参加者の女性が「このトイレ、私のママの家に昔あった!」と喜んでいました。

2階には他に、ドアが開放されて中が見える部屋がありましたが、説明はなくスルーでした。
十字架がチラッと見えたので礼拝かなにかだと思います。
45分のツアーなのに1時間以上かかっていたので、きっと説明を色々省いたのでしょう。

ゲストルーム
ゲストルームは、ふわっとピンク系で可愛い雰囲気でした。ベッドもかわいかった〜。

廊下
2階の廊下にはズラーッと本棚が並んでいました。
こんなに本に囲まれて暮らしていたなんて、やっぱりここの城主は本の虫だったんだなと感じました。


ここでガイドツアーは終了です。
ツアーの後に各自で気になった部屋を見る、なんてことはできず、みんな外へ出されてしまいました。
でも大満足です。
城のカフェ
お城の東側にBorggårdscafétというカフェがあります。
入り口には、「オープン」という看板はあったのだけど、重厚な扉なので「本当にここ入っちゃっていいの?」とドキドキしました。

思い切って扉を開けたら、2階へ上がる階段がありました。

細い廊下を進むと、コスメ販売やカフェのカウンターがありました。


ケーキやコーヒーは、カウンターの後ろの階段を降りて自ら取りに行くスタイル。
ということで、階段を降りました。上がったり下りたりと忙しいカフェ。
ちなみにエレベーターはないそうです。

階段を降りてみると、誰かのおうちのキッチンみたいな光景が広がっていました。


アーモンドケーキとコーヒーを取って、再び階段を上がり、先ほどのカウンターへ戻って支払います。

ショーケースにはチョコレートケーキやブルーベリーパイなど、一見して「これ絶対甘すぎだよね?」と思うケーキたちが並んでいました。
とりあえず、一番甘さ控えめそうなアーモンドケーキを選んだら、甘さはほどよく、しっとりしていて美味しかったです。
コーヒーも、まったく期待していなかったのですが、淹れたてで香りも味もばっちりで、「え?美味しい!」と心の中で叫んでしまいました。

Borggårdscafét
住所 : Tyresö slott östra flygeln 135 60 Tyresö
地図 : Googleマップで見る
HP : https://www.rumforhalsa.se/
※お城のカフェはRum för hälsa の運営で、スパもあります。スパの予約はこちらから
お城の外で楽しめること
Tyresö城の周りは緑がいっぱいで、散策するのにぴったりの場所です。
城の南側に広がるイングリッシュパークを通ったら橋を渡って、Notholmen島まで足を伸ばしてみましょう。
湖畔カフェでのんびり
夏の日中は半袖でも過ごせますが、湖からの風が意外と冷たくて、薄手のカーディガンを持っていればもっと快適だったなと思いました。



橋を渡ったらすぐにCafé Notholmenが見えます。外の席は人でいっぱいなので、すぐわかると思いますよ。

外の席はほぼ満席でした。でもここでは食事ではなくドリンクを飲んだだけ。

庭園や自然を散策
お城の周りは緑あり水辺あり。サクッと見て回れます。

Tyresö城のまわりは、豪華さよりも静けさが目に飛び込んできます。
お城も木々も「今日もここに立ってますよ」と静かにあいさつしてくれるみたい。
城の南側にはイングリッシュ・パークがありますが、このときは、お花はあまり咲いていなくて残念でした。

お城の周辺の大きな木々が並んでいますが、どう見ても私より先輩で、いつからここに立ってるんだろう?と見つめてしまいました。
木を眺めるのが好きなので、私には最高の場所でした。


Googleマップの口コミでは、お城カフェのランチの評判が微妙だったので、サンドイッチを持参しました。
ベンチに座って大きな木を眺めながら食べたランチは、美味しさ何割か増しでした。
でも、このあと行ったあのカフェのケーキとコーヒーがとても美味しかったので、「あ、ここ(Borggårdscafét)で食べてもよかったかも」とちょっとだけ後悔。






城の周辺は芝生や砂利道も多いので、歩きやすい靴がおすすめです。
教会
バス停の近くにはTyresö教会があります。
この日はミサか何かが行われていたようで、内部を見ることはできませんでした。


お城の中はもちろん、庭園や湖畔もとてもフォトジェニックで、写真を撮りまくってしまいました。
気づいたら写真を撮りすぎて、スマホのバッテリーがどんどん減って行きましたが、モバイルバッテリーがあったので良かったです。
ところで、帰宅してからGoogleマップを見ていたら、お城の近くに、良さそうな宿を見つけました。
公式サイトからしか予約できないのかも?
Tyresö城は、ストックホルムから日帰りでも行けるけれど、ここに一晩泊まって、早起きして城の周りをお散歩するのも楽しそう。
ちょっと心が揺れます。
Tyresö城へのアクセス
Tyresö城へのアクセスですが、グルマーシュプラン(Gullmarsplan)から、875番のバスに乗り、「Tyresö Kyrka」バス停まで約30分です。
バス停を降りたら、お城までは徒歩7分くらい。

バス停の案内板により、875番のバス停が「N」とわかりました。


ひたすら「N」のサインを見ながら歩いて、階段を上がったらバス停に到着します。



お城は夏だけ、庭園は一年中
お城の内部は夏しか公開されていませんが、周辺は一年中入れるので、春夏秋冬訪れて楽しみましょう。
さいごに
日本の主要な北欧ガイドブックをいくつか見ましたが、Tyresö城の情報はまったく載っていませんでした。地味だからかな?
でも、外見は地味だけど、中に入ると意外としっかりお城。観光客も少なくて穴場と言えます。
そして何より、ここは王族の住まいではなく、上流階級だけど普通の一家の家だったことに注目したいです。お金持ちってすごいな、とため息が出ます。
蔵書もたっぷりで、やっぱり本を読むことが上流階級への近道なのか?なんて考えながら見て回るのも楽しかったです。
ストックホルムの定番観光に飽きたら、ぜひ足を伸ばしてみてください。
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