「せっかくストックホルムに来たけれど、人気スポットはどこも人がいっぱい。」
「観光は楽しいけれど、そろそろ静かな場所で、自分のペースで過ごしたくなってきた。」
そんなふうに思っているなら、ストックホルム中心部から30分の場所に、自然とアートが揃った素敵な場所がありますよ。
ストックホルムの隣、Lidingö島にある彫刻庭園「ミレスゴーデン」は、アートと向き合える北欧の穴場。年間パスを持ち、これまで何度も通った私が、その魅力をたくさんの写真とともに紹介します。
彫刻やアートが好きな方にはもちろん、観光に少し疲れた人にもぴったりの、静かな時間を過ごせる癒しの場所です。
読み進めるうちに、あなたもきっと、次の旅先リストにミレスゴーデンを入れたくなるはずです。
ミレスゴーデンの見どころ
庭園の名作彫刻
ミレスゴーデンの見どころは、庭に立ち並ぶ彫刻たち。どれもかなり大きくて、近くで見ると圧倒されます。
絵画と違って簡単には動かせないので、ここに来ないと見られないスペシャルな感じも好きです。

ポセイドン 1930

ポセイドンはギリシャ神話の海の神です。像の高さは7メートルで、右手には魚、左手には貝殻を持って立っています。
髪はムール貝、帽子は貝殻でできているとのこと。でもなぜムール貝?
ミレスゴーデンの高台に立つポセイドン像は、神話の中で彼が統治していた海の王国「ヴァルタン」を見下ろすように建てられています。
ヨーロッパと雄牛 1926
次は、ミレスゴーデンでいちばん大きな噴水です。
1921年、カール・ミレスはスウェーデンのハルムスタッドで「都市の噴水」の製作を頼まれて、5年後に完成させました。

モチーフは、古代神話の「エウロペと雄牛」。
ゼウスが王女エウロペに恋をし、雄牛に姿を変えて彼女を誘拐し、クレタ島へ連れ去るという物語です。
好きすぎて誘拐してしまったなんて、現代だとストーカー?
誘拐された王女エウロペはどう思っていたのでしょう?気になります。
噴水のまわりでは、海の神ポセイドンの側近であるトリトンたち(魚の尾を持つ男たち)が泳いでいます。
男とペガサス 1949
ペガサスはギリシャ神話の空を飛ぶ馬で、ポセイドンの子どもです。
英雄ベレロフォンがペガサスに乗って冒険するという話もあります。


ペガサスは大きな翼で空へ舞い上がって、男はちょっと離れて、まるで自分で空を飛んでいるみたい。
この彫刻は、神話の物語だけでなく、人間の可能性や想像力も表しているそうです。
じゃあ、私たちもいつか本当に飛べるのかも?みたいな気持ちになりました。
音楽を奏でる天使たち 1949-50
カール・ミレスはアメリカで天使の像も手がけていて、その作品は世界中の様々な噴水で見られます。
天使たちは、彼の作品によく登場する裸の少年の姿で、さまざまな楽器を演奏しています。

なかでもフルートを吹く天使は、「マルテ、天使と出会う – ミレスゴーデンの5月の夜」という本で主人公になっています。







リトルオーストリア/オルガのテラス
オルガのテラスにある噴水は、翼のある馬ペガサスが生んだとされる泉「アガニッペ」にちなんでいます。
馬が泉を生んだ?神話って結構ぶっ飛んでいますね。
アガニッペはムーサイの聖なる泉で、その水を飲んだ人は創作のインスピレーションを得たとされます。

ムーサイは芸術と科学の守護者で、人々にひらめきを与える存在でした。
この彫刻でムーサイはイルカの上に乗っています。

彫刻って奥深いですね。背景をもっと詳しく知りたくなります。
企画展
ミレスゴーデン美術館には、入口を入ってすぐの室内に、大きな展示スペースがあります。
撮影をした日は、企画展の準備中で写真はありませんが、いつも見応えのある展示なので楽しみにしています。
これまでにウィリアム・モリス展や葛飾北斎展、ロートレック展、スティグ・リンドベリ展などがありました。
アーティストの家
ミレスゴーデンは、世界的に有名な彫刻家カール・ミレスとその妻でアーティストのオルガ・ミレスによって造られました。
大きな母屋は、1910-1920年代に夫妻の住まい兼仕事場でした。

1930年代後半、ミレスゴーデンは国に寄贈され、その時このアーティストの家も一般公開されました。
当時、夫妻はアメリカに住んでいたとはいえ、生前に家を寄贈するってすごいなと思います。
大きなアトリエ
大きなアトリエは、1910-20年代にカール・ミレスの仕事場で、ここで有名な「オルフェウス」や「エウロパと雄牛」などの原型が作られました。
1950年代にはミレスのアンティークコレクションの収納場所に使われ、現在は石膏模型や制作中の写真が展示されています。

彫刻の石膏型も展示されていますが、これらはブロンズ像を作る元になります。
間近で見るととても大きくて、こんな大きなものをここで作っていたの!?と驚くと思います。
制作風景を見てみたいですよね。


アトリエガーデン
大きなアトリエの裏には、静かで花や緑に囲まれた庭があります。
もとは家庭菜園として作られましたが、今では癒しの空間として親しまれています。

制作の合間に、カール・ミレスもここで休憩していたのかな?なんて思います。
職場環境が最高ですね。

庭へは、アトリエのガラス戸から出られます。
アンティークコレクションの展示室
ミレスゴーデンのオープンロッジア(Öppna loggia)は、1913年に完成して、もとは屋外スタジオとして使われていました。
ロッジアとは、屋根はあるけれど壁のない開放的なスペースのこと。イタリアに多いみたいです。

夏の間は、奥のパビリオンがダイニングルームとして使われていて、家具や絵画も置かれていたそう。
1960年代後半にガラス張りに改装されて、アンティーク展示室に!
冬は温室(オリーブ、柑橘類、ザクロ等)としても利用されていました。

鼻のない顔や体の一部が欠けた石膏などが多くて、時間の経過を感じました。
ミュージックルーム
ミュージックルームは、もともとリビングルームで大きな暖炉がありました。
今は暖炉はなくなって、「ミュージックルーム」となっています。

スタインウェイのグランドピアノと、16世紀の古いオルガンが置かれています。
オルガンはザルツブルクの修道院から運ばれてきたもので、モーツァルトの父が演奏していたと言われています。
宗教的な木製の彫刻の中には、16 世紀の祭壇画のレリーフが 2 つあります。
1 つは臨終の床にある聖母マリア、もう 1 つは聖アンナ自身です。

ギャラリー
ギャラリーは昼は展示スペース、夜はダイニングルームとして使われました。
モザイクの床と天井のアラバスターランプは、カール・ミレスのデザインです。



アンネのお家
ピンク色の平屋は、カール・ミレスの異父兄弟で建築家エバート・ミレスが1951年に設計しました。

長年カール・ミレスの秘書兼ホステスを務めたアン・ヘドマークが、後にこの家に住み、「アンネの家(Annes hus)」と呼ばれるようになりました。
ホステスは、訪問客を迎えたりおもてなしをする役割です
内装は、スウェーデンの人気インテリアブランド「Svenskt Tenn」のデザイナー、エストリッド・エリクソンとヨーゼフ・フランクが手がけました。

個人宅の中を見るのって楽しすぎますね。当時の生活を想像したり、どんな会話をしていたのかなと考えたり。

1950年代にはミレス夫妻もこの家で夏を過ごし、カール・ミレスは1955年にここで静かに亡くなりました。
ミレスゴーデンあれこれ
カール・ミレスってどんな人?
さて、ミレスゴーデンを作ったカール・ミレスですが、彼はスウェーデンを代表する国際的な彫刻家です。
若い頃パリで独学し、彫刻家ロダンの助手を経験したり、古代彫刻の収集も行いました。
あのロダンの助手!ってびっくりしませんか?「考える人」の像で有名なロダンです。

カール・ミレスの80年の生涯は、盛りだくさんで書きれないので、大きな出来事だけササっと時系列にしますね。
1875年: スウェーデンで生まれる。母親はカールが4歳の時に亡くなる。
1897年: 奨学金を得てパリへ渡る。彫刻家ロダンの助手を経験。
1905年: 画家オルガと結婚。
1908年: スウェーデン・ミレスゴーデンに自宅兼アトリエを建設。
1931年-1951年: アメリカに滞在。クランブルック美術アカデミーで彫刻を教える。教え子にはオリバー・ラグローネ(Oliver LaGrone)も!
1936年: ミレスゴーデンをスウェーデンに寄贈。
1950年代: ヨーロッパに戻り、最後の大作を制作。
1955年: 80歳でミレスゴーデンにて逝去。
1967年: 妻オルガが亡くなる。
私が好きなのは、「カールは、特に優秀な成績を収めたわけではなかった」というエピソードです。
成績がイマイチだけど、手先が器用で粘土や木工が好きだったカールを見たお父さんが、学校をやめて家具職人になる道をすすめたそうです。
子供の得意や才能を見抜いたお父さんがすごいなぁと思いました。普通の親なら、「とりあえず勉強しなさい!」とか「もっと勉強しなさい!」とか言ってしまいそうなのに。
やはり、偉大な人には偉大な親がいるな、と感心しきり。
できないことを頑張るよりも、できることを伸ばしていく、このことを心に刻みました。ありがとう、カールのお父さん!
ミレスゴーデンのここが好き
ここまでミレスゴーデンの魅力を解説してきました。ポイントは彫刻、そして企画展ですね。それから美しい庭園と静かな時間。
ただ、派手な展示が好きな人は「ミレスゴーデンって何にもないところだな」と感じると思いますので、ABBAミュージアムやヴァーサ号博物館などの有名な観光地へ行かれることをおすすめします。
逆に、静かな時間が好きな人、自分と対話するのが好きな人にはおすすめの場所です。
芸術ってなくても死ぬわけじゃないけれど、目に見えない心の栄養みたいなものだと思います。
芸術に触れると心が満たされて、自分にも人にも優しくなれたり、心が満足する。
そんな時間をくれるミレスゴーデンが、私は大好きです。
レストラン:Millesgården Lanthandel
スウェーデン産の食材を中心に、環境に配慮して育てられたものを使ったレストランもあります。
コーヒーはオーガニック豆をストックホルムで手焙煎し、淹れる直前に挽いているとのこと。
独特なスパイス使いや食材の組み合わせなど、保守的なスウェーデンにしては攻めた料理も出てきます。
それに量が控えめなので、ここで食事はほとんどしませんが、お茶がてら利用するのにはちょうどいいですよ。

レストランへは Herserudsvägen 28の入口からそのまま入れるので、博物館を通ったり入場料を払ったりしなくても大丈夫です
庭園側からレストランに入りたいときは、入り口でもらえるQRコード付きの紙を、庭園とレストランの間にある扉のリーダーにかざせば入れます。


Millesgården Lanthandel
住所 : Herserudsvägen 28, 181 50 Lidingö
地図 : Googleマップで見る
HP : http://millesgardenlanthandel.se/
ショップ
ショップは以前に比べると商品の数が少なくなったな、という印象です。
とはいえ企画展の時には、関連グッズを思わず買ってしまう私がいます。


おすすめの季節
おすすめの季節はなんと言っても、6-8月です。そこら中に緑があふれる、スウェーデンが1番綺麗な季節だと思います。
夏はミレスゴーデンのお花も咲き乱れていて、彫刻と同じくらい見とれてしまいます。
下の画像は、5月下旬ですが、こうしてみると5月も綺麗でしたね。5月上旬はまだ寒くてお花が咲いていないかもしれません。







ストックホルムからのアクセス
ストックホルムからミレスゴーデンまでは、地下鉄、バス、路面電車で行けます。
地下鉄駅T-Centralenからの所要時間は約30分です。
バス
地下鉄赤ラインのT-Centralen駅から終点のロプステンまで行き(約10分)、そこから201、202、204、205、206、211、または212番のバスに乗り(約2分)、Torsvikstorg駅で下車します。
バス停からからミレスゴーデン駅まで徒歩約7分です。
路面電車
路面電車の21番線は、Ropsten(ロプステン)駅からTorsvik(トーシュヴィーク)駅またはBaggeby(バッゲビー)駅まで運行しています。
ミレスゴーデンはこの2駅の間にあって、どちらの駅からも徒歩約7分です。
Torsvik駅からは急な坂道や階段が多くて、Baggeby駅からは平坦な道なので歩きやすいですよ。

Millesgården Museum
住所 : Herserudsvägen 32, 181 50 Lidingö
地図 : Googleマップで見る
HP : https://www.millesgarden.se/
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Duranceは、実はピローミスト以外もおすすめで、思わず深呼吸したくなる良い香りです。
アロマオイルを垂らせる加湿器もおすすめです。部屋にふわっといい香りが広がると、気持ちがほぐれて、いろんなことを許せる気がします。
スウェーデンでは、キャンドルを使ったり、キャンドルにオイルを垂らして光や香りを楽しむのが定番。
スウェーデン人の家で、キャンドルがないところって、私の知る限り見たことがありません。
地震の多い日本で、キャンドルはちょっと不安ですが、火を使わないディフューザーなら安心して使えると思います。
自然を感じる癒しの音楽
スウェーデン人はお散歩が大好きです。特に自然の中を歩くのが好きで、若い人でもよく森や公園を散策しています。
日本では、お散歩というと年配の方のイメージが強いですが、スウェーデンでは世代を問わず自然の中で過ごすことが多いかな。
私にとっても、森の新鮮な空気や鳥のさえずりを感じるお散歩は、心を整える大切な時間となっています。
さいごに
ミレスゴーデンは派手さはないけれど、訪問した後は、心にじんわりと余韻が残ります。
ひかえめで主張しすぎない、でもしっかり個性がある、北欧らしい静かな彫刻庭園。
庭園の美しさやアートに触れて、「明日からまたがんばるぞ!」と、エネルギーチャージできる素敵な場所です。
観光地に疲れたときにぜひ訪れてみてください。
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